夜、家から追い出される
はっきりと覚えているのは一度、霧がかかった夜に「出て行け!」と言われ、どうしようもなくなった私は泣きながら家を出た。幼稚園のころだろうか。
それまでにも何度か母から出て行け!と怒られていたが、なんとか許してもらっていた。しかしこの日は普段とひと味違って、家を出て行ったらこうしなさいああしなさいと、ずいぶんと具体的に説明されたのだ。「家を出たらいつも通るところに交番があるでしょ?そこに行って、親に捨てられたと言えば保護してくれる施設に連れて行ってくれるから。そうしなさい。」と。母がこうなればもうどうしようもないと思ったのだろうか、上着を着て家を出て行く私。外は暗く霧が立ちこめ街灯がオレンジ色に不気味に灯っていたのを覚えている。しばらく歩くと母が4階の窓から叫びながら戻って来いと言っている。家に帰ると「本当に出て行くことないでしょ!頑固な子ども!反省してるのか!」と。
その後何回か出て行けと言われ、家を出ては母に呼び止められ連れ戻されるという記憶がある。出て行くまでヒステリーが治ることはなく、最善の方法だったのでは?